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東京高等裁判所 昭和31年(ラ)813号 決定

抗告人 伊藤義一

主文

本件抗告を棄却する。

理由

抗告人は、原決定を取り消し更に相当なる裁判を求める旨申立て、その理由として別紙「抗告の原因」のとおり述べた。

よつて案ずるに、本件記録編綴の報告書によれば、昭和三十一年十月五日午前九時の本件競売期日及び同月十二日午前十時の本件競落期日の公告が同年九月十九日原裁判所の掲示場に掲示してなされたことが認められるので、抗告人の一の主張は採用し難く、また、最低競売価額は競売法第二十八条の規定に従つて定むべきところ、本件記録によれば、原裁判所が鑑定人新間嘉兵衛に本件競売不動産の評価を命じその評価額を以て最低競売価額としたことが明らかであるので、この点につき何ら違法の点はなく、右評価額がさきに抗告人らが本件不動産を競落取得した時の価額に比し甚しく低額であることは抗告人主張のとおりであるが、本件記録編綴の判決正本によれば、抗告人らがさきに昭和二十七年十二月本件不動産を競落取得した後事情が変り価額が低下して競売すればその価額はも早半分にもならない事情となつたことが窺えるので、前記評価額を一概に不当に低額のものとなすに由ないのみならず、最低競売価額が低額であるということは、競売法第三十二条第二項によつて競売手続に準用される民事訴訟法第六百八十条第六百八十一条第六百七十二条所定のいずれの事由にも当らないので、かような事由は抗告の理由となし得ないものであるので、抗告人の二の主張も採用し難い。

他に記録を精査するも原決定を取り消すべき事由を認め得ないので、本件抗告を理由なしとして棄却し、主文のとおり決定する。

(裁判官 岡咲恕一 亀山脩平 脇屋寿夫)

「抗告の原因」

一、原裁判所は、民事訴訟法第六百五十八条第六百六十一条による公告を原裁判所の掲示板に掲示して公告をしない、これらの規定は利害関係人の権利を侵害しないため定められたもので、原裁判所の手続にはこの点の違法があり、原決定は取り消さるべきものである。

二、本件競売不動産は、抗告人が静岡地方裁判所昭和二十七年(ヌ)第四〇号不動産強制競売事件において最低競売価額金十八万四千三百円で競落取得したものであつて、これを最低競売価額金五万六千二百円と定めて競売手続を実施し競落させたのは明らかに不当である。抗告人が競落した価額から考えれば本件競売不動産は約金十二万九千円となる筈であるが、その後比隣の地価並びに家屋も高謄していることは公知の事実であるので、右不動産の真価は右金十二万九千円を遙かに上廻つているものである。然るに原裁判所の最低競売価額は右事実に反し遙かに右価額を下廻つて居り抗告人は不当の損害を受けるものである。よつて原決定の取り消しを求めるため本件抗告に及んだものである。

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